寒暖差アレルギーについて

寒暖差アレルギーについて

朝晩と日中の温度差が大きくなる季節の変わり目。この時期になると、鼻水がでたり、くしゃみを連発したり、花粉症や風邪のような症状が出ることがあります。それは「寒暖差アレルギー」かもしれません。

■鼻の粘膜の腫れが原因
寒暖差が7度以上で起きやすい

太陽が出ている昼間はポカポカ暖かいけれど、日が落ちた夕方以降は急激に冷え込む――。秋から冬にかけての時期や春先などの季節の変わり目は、このように1日の寒暖差が大きくなるものです。
こうした寒暖差によって起きるくしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状を「寒暖差アレルギー」といいます。医学的には「血管運動性鼻炎」と呼ばれ、温度差が刺激となって鼻の粘膜の血管が広がり、粘膜が腫れることで引き起こされる症状と考えられています。
寒暖差アレルギーの症状は、温度差が7度以上になると出やすいといわれています(*1)。
特定のアレルゲンが原因ではないので、寒暖差アレルギーのみを対象にした薬は販売されていませんが、症状が重い場合には、療法として抗アレルギーの内服薬やステロイドの点鼻薬などを用いることもあります。
(*1) 出典:長谷川真也「血管運動性鼻炎の病態に関する研究」『千葉医学雑誌』75巻 57〜67ページ 1999年出版(千葉医学会)
くしゃみや鼻水、鼻づまりは、風邪や花粉症、アレルギー性鼻炎などでも生じる症状です。 しかし、風邪には「ウイルスによる感染」、花粉症やアレルギー性鼻炎には「花粉、ホコリ、ダニなどの原因となるアレルゲンによる免疫反応」とそれぞれはっきりした原因がありますが、寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)にはウイルスやアレルゲンは関与していません。

■自律神経のバランスの乱れが
寒暖差アレルギーの一因

寒暖差アレルギーの原因はまだ明らかにされていませんが、一因として自律神経のバランスが関係していると考えられています。
自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、臓器や血管に対して正反対の影響を及ぼしています。例えば、交感神経が優位になると血管が収縮し、血圧を上昇させますが、副交感神経が優位になると逆に血管が拡張し、血圧の低下をもたらします。また、心拍数も交感神経が優位になると増加しますが、副交感神経が優位になると減少します。
このように、体内の環境は自律神経のバランスによって適切に保たれており、鼻の粘膜にある血管の収縮や拡張も自律神経によって通常はコントロールされています。
ところが、激しい寒暖差による刺激を受け続けると自律神経のバランスが乱れ、鼻の粘膜の血管の収縮・拡張の調節もうまくいかなくなります。その結果、鼻水や鼻づまり、くしゃみなどの鼻炎の症状が表れやすくなるのです。

■衣類などで温度差の調節を
ストレス解消や運動もお勧め

寒暖差アレルギーを防ぐためには、体に感じる温度差をできるだけ小さくすることが大切です。外出時などはさっと羽織れる衣類やマスクを持ち歩くなど、身につけるものを工夫しましょう。
寒い屋外を出歩く時は、首元をスカーフやマフラーなどで温め、さらにマスクを着用するのがお勧めです。首の皮膚表面近くには太い血管が通っているため、温めることで顔まわりの血流が促進されます。また、マスクをつけることで鼻の粘膜に触れる冷気を遮断する効果が期待できます。
皮膚表面近くの太い血管は手首や足首にも通っているので、手袋や靴下などでこの部分をしっかりガードするのもよいでしょう。さらに効率よく血流を促進することができます。
なお、温度差だけでなく、タバコの煙や排気ガス、香料などの化学物質、精神的なストレスなども自律神経のバランスを乱す要因となり、寒暖差アレルギーに影響するといわれています。こうした刺激となる物質をできるだけ避ける、こまめなストレス解消を心がけるといったことも、寒暖差アレルギー対策につながります。
さらに、筋肉量が少ないと体内で産生される熱量が少なく、体温調整がしづらいため寒暖差に弱くなりやすいということも考えられます。
そこでぜひ行いたいのが運動です。適度な有酸素運動や筋トレは、筋肉を強化し、血流を促進するうえでとても有効です。結果的に寒暖差アレルギーを予防する効果も期待できます。

寒暖差アレルギーの症状は、温度差がほとんどない季節や環境であれば自然と落ち着く場合がほとんどです。
栄養バランスのとれた食事や適度な運動、十分な睡眠といった健康的な生活で自律神経のバランスを整え、温度差による刺激に左右されない体づくりを目指しましょう。