適度なスポーツは〇、本気のスポーツは✕

姿勢の変化は関節可動域の変化です。関節可動域を最大限まで動かさなくなったら、必ず硬さは生じてきます。

 身体が硬くなるのは、椎間板がしぼんでくる、関節の軟骨がすり減ってくるなど、年齢のせいという部分もありますが、ストレッチを続けている人は硬くなりません。椎間板にしても、関節の軟骨にしても、関節を最大限に動かして、負担が一部にかからないようにこまめに動かしていれば経年劣化を抑えることができます。

 たいていの人の硬さは、年齢のせいではなく、ただ何もしないためです。会社で一日中デスクワークばかりだったり、システムエンジニアでずっと座ってパソコン作業をしている人でも、スポーツを継続してやっていたり、ストレッチをしている人は大丈夫です。

 身体の柔らかさの証明である関節可動域は、スポーツをしていればだいたい維持することができます。飛んだり跳ねたり、足を開いたり、腕をぐるぐる回したり、身体もひねるし、曲げることも反ることもします。しかもそれを最大限まで動かします。スポーツをやめると、最大限まで動かす機会はなくなります。その分、可動域は狭くなり、拘縮が起こってきます。

 若いときからスポーツをやっているのに、中年になって身体を壊してやめてしまう人がいますが、スポーツで身体を痛めてしまうのは、単に能力を超えてしまった動きをしているということです。自分の筋力と関節の可動域の限界を超えているということです。

 老化の影響で40歳を過ぎると筋肉は年々細くなっていきます。鍛えていれば筋肉の貯金をすることができますが、若いときと同じ筋トレメニューをしていても低下していきます。それは栄養、特にたんぱく質を若いとき以上に摂らないと筋肉がつくられないからです。

 若いときは消化吸収の能力が高いので、体重1キロあたり0.24グラムのたんぱく質を摂取すればいいのですが、70代になると吸収力が低下し体重1キロあたり0.4グラムも摂取しないといけなくなります。お肉でいえば1回の食事でおよそ100グラムです。年齢とともに食事(たんぱく質)を増やしていないと、知らず知らずのうちに筋肉の貯金は減っていきます。そのため、同じスポーツだったとしても、いつの間にか貯金を超えた動きとなってしまっていて壊れるのです。

 レクリエーションくらいの適度なスポーツはいいのですが、プロスポーツとなると、はっきり言って身体にとってはやり過ぎです。本気でやるスポーツというものは、身体には負担が大き過ぎるのです。

 極限をめざした動きは、私たちに感動を与えてくれますが、痛みの閾値を超えた領域です。それを鍛え上げた分厚い筋肉で何とかこらえているという姿です。ですから、プロスポーツの選手は激しい運動であればあるほど引退が速いですね。若いうちに続けられなくなります。痛みの三大原因の「使い過ぎ」です。

 引退後は、膝が痛い、肩が痛い、肘が痛い、腰が痛いという方が多いです。皆さん現役中にどこかしら痛めています。そのため、筋トレを続けていかないといけません。筋肉で関節の負担を和らげて痛みを抑えながら生活しているという感じです。適度なスポーツはいいですが、本気でやるスポーツは危険が伴います。