ねこ背は加齢の宿命か。

年をとって猫背になってくると、顎を上げて首を持ち上げる姿勢でいるので、頚椎にストレスがかかり、結局、首が痛い、肩こりだ、頭痛だという方向にむかってしまいます。するとすぐに首や肩をほぐそうとしてしまいがちですが、実は正解ではありません。上の頚椎が悪い人でも、下の腰椎から治していくのが正解です。背骨は全部つながっています。どこかに痛みが生じたときには、そこだけに目を向けるのではなく、姿勢全体を見ていかなければなりません。

 姿勢によるトラブルがいちばん起こりやすいのは腰です。屈むという姿勢は生活の中でたくさんありますが、反るという姿勢はあまりありません。可動域いっぱいまでねじるという姿勢となると、ほとんどないでしょう。意識的にストレッチをしないと、必ず身体は硬くなります。

猫背の人は、背中が曲がっていて腰の前弯がなく、反りが出なくなるので、いつも重心が前に落ちています。背骨の靭帯を使った楽な姿勢です。しかし、腰の下の方の筋肉にとっては楽ではありません。常に上半身を後ろに引っ張り続けていないと、前に倒れてしまうからです。そのため、猫背のままでずっといると腰がパンパンに張って硬くなり痛みが出ます。猫背は腰痛を起こしやすい姿勢なのです。

腰椎は5個積み重なっています。その上に胸椎が12個積み重なって、ようやく首のところにきて、頚椎が7個あります。この積み重なりは、全体で影響し合っています。もし下が硬かったり、ズレたりして動きが悪いと、上の背骨が代償します。腰の可動域が硬くて曲がらなかったりすると、上で曲げるのです。

その負担のかかる場所が頚椎だと、首が痛くなったり、肩がこったりするわけです。首や肩をマッサージすると楽になりますが、それは一時的です。根本的なトラブルが解消したわけではありません。腰の可動域を改善しなければ、また上の頚椎が過剰に動かなければならないので痛みは再発します。

つまり背骨全体で考えていく必要があり、背骨全体の動きを改善しなければなりません。そのため、まずはストレッチによって土台となる背骨のいちばん下の腰椎からしなやかにしていく必要があります。

ところで、首を回すのはよくないという説がありますが、動かすことはいいことです。ただ、脊柱の椎体1個ずつが関節ですから、それぞれの動きをストレッチでやわらかくしていき、すべてが連携した状態をつくらなければいけません。

下からつくりあげていった中で首を回す分にはいいですが、連携していない状態で無理に首だけをぐるぐる回したりすると、オーバーストレッチ(過度なストレッチで筋肉が損傷すること)になったり、骨がぶつかったりして、余計に悪くなります。

まずは、猫背で硬くなった筋肉をストレッチによって柔軟にし、背骨の可動域をいっぱいまで動くようにする。そして筋肉やインナーマッスルが強化されれば、猫背は改善し、首の痛み、肩こり、腰の痛みも消えていきます。あとは、そのしなやかになった身体を維持することです。