増加するVDT症候群って何?

「首が痛くてしょうがない」「肩、背中がつらい」こんな患者さんの声をよく耳にします。というより増えているように思います。それはVDT症候群かもしれません。

現在の私たちの生活は、パソコンや携帯電話、さらにはスマートフォンやタブレット端末など、さまざまな「表示機器」=「VDT(Visual Display Terminal)」に囲まれています。そんな機器を長時間使うことによって起こるのがこの病気です。

目の疲れ、首や肩のこりなど肉体的な症状だけでなく、イライラや不安、抑うつ状態になるなど、精神的な影響を及ぼすこともある代表的な現代病のひとつといえます。厚生労働省では、平成10年から5年ごとに「技術革新と労働に関する実態調査」を行い、VDT作業に対する労働者の適応状況や、職場環境や労働者の衛生管理の実態などを調査しています。平成20年の調査によれば、「VDT作業でストレスを感じる」と答えた割合は34.6%、「VDT作業で身体的な疲労や症状がある」と答えた割合は68.6%にのぼっています。このうち「VDT作業で身体的な疲労や症状がある」と答えた人で、具体的な症状をあげてもらうと、図のようになります。ディスプレイを長時間見続ける作業であるため、「目の疲れ・痛み」が90.8%と、ほとんどの人が感じていることがわかります。

オフィスでも家庭でも、パソコンなどの使用はますます高まり、使用する時間も長くなっています。近ごろのスマートフォンやタブレット端末などの普及とあいまって、今後はさらにVDT症候群を訴える人も増加すると考えられます。

■どんな症状が現れるのか。

特にオフィスでのパソコン作業では、視線がディスプレイ、キーボード、書類の3カ所を移動します。また、集中してディスプレイを見続けるため、まばたきの回数が減って、目が乾き、目に負担をかけます。こうした状態が続くと、ドライアイや目の疲れ、ぼやけ、充血などを引き起こします。また、同じ姿勢を長く続けることから、首や肩のこり、背中や足腰のだるさ、食欲不振など、心身両面に影響を及ぼすこともあります。

以下にVDT症候群の症状を大きく3つに分けてまとめてみました。

◎眼症状

目の乾き(ドライアイ)、目の痛み、充血、視力の低下、目のかすみ、ものがぼやけて見えるなど

◎骨格筋症状

首や肩のこり、首・肩・腕の痛み、足・腰のだるさ、背中の痛み、手指のしびれなど

◎精神・神経症状

頭痛、めまい、いらいらする、食欲不振、不安感、抑うつ状態、睡眠障害など

こうした症状が気になるようでしたら、早めに医師の診察を受けるようにしましょう。特に目の痛みや背中の痛みなどは、別の病気がひそんでいるケースもあるからです。